日本語教師体験談(中国江蘇省編)

世界の日本語教師体験談

<運命の出会いで日本語教師になった>

 心理士になるために入学した四年制大学は自由度が高く、専攻無しで幅広い分野の学習をすることができました。その中で履修した中国語の教授から「留学してみないか?」と言われました。入学した年に中国交換留学プログラムが開始されていて、その第一号になる学生を探していたようです。

 わたしは父方の祖父母が中国残留孤児ということで、浅からぬ縁があったので行くことをすぐに決めました。

 その時に触れた文化、人柄、食べ物、言語、風景……ありとあらゆるものがわたしを魅了し、そして「この場所で働きたい、生活したい」という何か運命的なものを感じたことを覚えています。

 帰国し、もともと日本語という言語に興味があったので日本語教師として中国に戻ることを決めました。幸運にも大学には日本語教師養成講座と国語教諭免許の取得コースがあったので、どちらも履修し、大学修了と同時に無事資格を手に入れました。言語教育として「日本語教育」「国語教育」――これらは全く異なるので、両側面から「日本語」を見ることができたのはとても良かったと思います。

<山東省から日本、そして江蘇省へ>

 卒業後すぐに山東省にある貿易会社の人材派遣部門で日本語教師として三年ほど、現場に立ちました。その中で、日本で社会経験があった方がもっと円滑に授業が行えるな、と思うことが多々あり、思い切っていったん帰国。

 建築材料と木材を卸している会社で営業として勤務する傍ら、授業でこの言葉を扱うとしたら、この文法を扱うとしたら、とイメージトレーニングをする日々。顧客のところを飛び回っていたので、様々な場面を体験することができました。これも現在まで非常に役立っています。

 三年ほど経ち、ある日突然「中国へ戻ろう」と閃いたため、教師求人を見始めたり、知り合いに声を掛けて募集しているところはないか聞きこんだりしました。

 その中で卒業した大学の教授(わたしに中国留学をすすめてきた、例の方)から連絡があり、協定校の中国の大学が教師を探しているとのことでお話をしてみたところ、とんとんと話が進みました。

 そして、人生で初めて中国の南へ足を踏み入れました。

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(限りなく北に近いので、ときどき雪も降る)

<大学は難しい!? 初めての大学教育>

 大学で教師をするようになって気付いたこと。

 それは、若者が可愛い! 賢い! ということ(感覚です)

 前回の人材派遣部門で教えていた相手は、もはや酸いも甘いも噛み分けた大人たち。落ち着きがあって、逆にこちらを見守ってくれているかのような包容力(?)があったのですが、いざ大学生と授業を通してコミュニケーションしてみるとこれが、純粋で、明るくて、素直で、興味を持ったら一生懸命やってくれて可愛い!

 わかりにくいところがあると顔に出るので、授業の中できちんと表情を見ていれば対処することができます。

 でも、難しいと思ったところ。中国の大学は全寮制であることが多く、この大学もそうなのですが、夜中にルームメイトと喧嘩して翌日青あざだらけで授業に来たり、昨日まで仲が良かったクラスが喧嘩してペア学習をしたくないと言ったり……子どもか! と思うことがよくあるのですが、考えてみれば親元から400キロ離れて寮暮らしをしていたり、そうでなくても朝から晩まで試験試験授業授業点数点数将来将来と追われている彼らには、想像もできないようなストレスがあるのかもしれません。

 現在は一年生会話、二年生会話・聴解・作文、三年生文学史・動画視聴解・読解・旅行日本語と幅広い教科を担当しており、一年生二クラス、二年生四クラス、三年生四クラスと多くのクラスと交わることができています。これもまた、大学での教育の醍醐味だと思います。日々準備に追われながら、どのクラスへ行くのも楽しみにしています。

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(学生が誕生日に用意してくれたケーキ)

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(一年生と一緒に行った記念館)

<中国語は必要なのか? うーん、微妙!>

 これは、海外で教師をしたい人にとっては気になる問題だと思います。

 わたしは祖父母との会話、留学して専門に勉強したこと、これまでの中国生活の中でべらべら喋ってきたこと、がありますので、中国語は問題なくできます。ですが、前回赴任の会社でも現在の大学でも、設定として「中国語も英語もわからない日本人」というのを貫き通しています。思わず話してしまいそうになるのをこらえて、わからないふりを続けています。そうすれば、学生がなんとか日本語でコミュニケーション取ろうと頑張ってくれますし、中国語の単語を説明してもらうこと、紹介してもらうことができます。休みの日も遊びに行きましょう、と言って、レストランやショッピングモールなどで一生懸命日本語を使い、あれこれと説明をしてくれます。

 わたし自身が中国語を理解していますので、その説明や紹介が本当に正しいかどうか? という答え合わせができます。それから、自分自身が中国語の発音や成り立ちなど、中国語、という言語に対して知識があるので、日本語とどう違うのかを説明することができます。

 しかし、今は海外でも多くの教育現場で「直接法」で指導することが多いです。現地の言葉ができなくても、授業中は一切問題ないのです。日本語で日本語を説明するのが「直接法」です。生活に関しては、学生や同僚教師が手助けしてくれますので、やはり問題なし。

 以上のことを踏まえて、わたしの結論としては【わからなくても仕事上生活上問題はないが、知識として理解していると役に立つかな?】です。

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(夜の教職員食堂。ほぼセルフサービス)

<住居についてと、休日は?>

 現在の大学では、大学側が住居を提供してくれています。大学の敷地内にあるアパートで、職員だけでなく外部の人にも貸しています。最低限の家具家電付き、中国では浴槽があるお部屋はほとんどありません。わたしの部屋はリビング、キッチン、バストイレ、寝室、書斎といった感じです。インターネットは大学内のWi-fi利用、電気代水道代は毎月請求が来るので、オンラインで支払っています。ガスはありません。

 また、中国では七階以上からエレベーターがつく、ということが多いそうです(学生談)

 ですので、わたしは毎日六階から地上まで、地上から六階まで階段を上り下りしています。いい運動です……。中国でお馴染みのネット通販『淘宝(たおばお)』もありますが、買ったものは部屋まで届けてくれませんので、これもやはり上り下りして所定の場所まで取りに行きます。

 休日は学生と食事に行ったり勉強会をしたり、ひとりでショッピングモールをぶらぶらしたり、気になっていた食堂に入ってみたり、路面電車に乗って知らない駅で降りてみたり……とやっています。楽しいですよ。

<教師職は、まず教師がエンジョイすべし>

 日本語教師になると、自分が当たり前に使っていた日本語について振り返ることができます。そしてそれを説明して理解したときの学生の顔! そのきらきらした表情を見る瞬間は格別の喜びがあります。辛い事、うまくいかない事も山ほどあるのですが、まず自分が教えることや授業を楽しめれば、準備もはかどりますし、学生も楽しんでくれると思います。エンジョイ!

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