きっかけ
420時間のコースを1年かけて受講し、終わると同時に中国広東省珠海市の日本語学校へ赴任しました。今は香港から長―い橋を渡ってクルマで行けますが、当時はフェリー。珠海は経済特区だったこともあって外国企業も多く、香港ほどではないですが、少し垢ぬけた街でした。
せっかく修了した日本語講師養成コース、やはり少しでも早く経験を積みたいですよね。私は受講中からインターネットで就活していました。私の最終学歴は短大卒でしたから高望みはできないと思い、条件を満たしたところにはほぼ挑戦していました。応募した日本語学校は、中国・ベトナム・インドネシア・タイ・カンボジア・インドなど。とにかくせっせと応募して、8校くらいは応募したと思います。
ありがたいことに3校ほどから合格をいただきました。インド、カンボジア、中国の学校です。
初めての海外生活ですし、日本の家族のことも心配。何かあったときに、少しでも早く帰国できたほうがいい…。というわけで最終的にはその中で一番近かった中国の学校に決めました。
珠海 卒業パーティ
しかしその学校は、残念ながら今はもうありません。というか、私が赴任して3か月でまさかの「解散」をしてしまったんです。経営悪化ということで…。
420時間コースの教材だった「みんなの日本語」を使用していたので、仕事はやりやすかったし、海辺ののんびりした環境も好きでした。昼休みに中国人の同僚と昼食を食べた、村の小さな食堂も好きでした。ブーゲンビリアの濃いピンクの花に覆われた建物で、その下では近所の人たちがいつもマージャンをしていました。ようやく仕事にも暮らしにも慣れてきたところだったのに…。
3か月では日本に帰るに帰れないし、こんな事情もわからない外国で仕事を失いホントどうしようかと。
またまたネットで就活の日々となりましたが、そう簡単には見つからない。気分転換にときどきマカオに遊びに行きました。バスで片道2元(30円くらい)で行けたので、カネはないが時間があったはうってつけの暇つぶし。カジノで有名なマカオですが、元ポルトガル領だったため欧米風の街並みが残り、街歩きにはとてもよかったんです。
さて次に見つけた働き口は、広州市の「桜国際日本語」という中国全土に展開する(本社は上海)日本語学校でした。珠海からバスで1時間半くらいでしたから、すぐに面接に行って模擬授業をし、採用となりました。
広州は大都会です。採用が決まって、珠海に帰るバスの中から大都会の夜景を眺め、次はここが私の街になる、とわくわくしたのを思い出します。
この学校には2年半いました。働きやすかったし、広州は住みやすかった。現地採用ですから給料はそれなりですが、物価は安く生活には全く困りませんでした。学生は比較的裕福な家庭の子女や社会人が多く、おおらかで付き合いやすかったですし、教材は学校の独自教材で教案も準備されていたので、経験の浅い私でも、珠海の学校のように準備に何時間もかけなくてもすみました。
日本人講師は常に5~6人いて、4人までの少人数会話レッスンと、15人までの会話レッスン、30人位の文化紹介を担当しました。そしてほぼ毎日入学見込み者への「体験レッスン」がありました。
広州のアパート
生活編
日本人講師同士よく遊びました。
中でも良く行ったのは、日本領事館近くの日本式居酒屋でした。アサヒとキリンの生ビールサーバーがあって、飲み放題の日がありました。お好み焼きとかラーメンとかそこそこ美味しかったです。
学生には、いろいろなところに連れて行ってもらいました。
広州は食の都ですから、飲茶、広東料理の他にも中国各地の料理を提供する飲食店がありました。学生たちは私たちを飽きさせないよう次々に新しい店を紹介してくれ、毎日が楽しかったです。中国では先生をとても大切にしてくれます。みんなで食事をしたときは、先生の分を払ってくれることも多かったですし、中には学生の親から3万円ほどの現金をプレゼントされた講師もいましたよ。
学生がよくご飯を作りに来てくれました。
語学は必要?
さて私が中国に来た時、中国語はニイハオ、しか知りませんでした。職場は基本的に日本語ですし、同僚も学生もほんとうによく助けてくれたので、話せなくても困ることはなかったと思います。しかし学生の家族に会う機会があった時、中国語の必要性を実感。「あなたの娘さんは、こんなに優秀なんですよ」と自分で伝えたかった。なので3か月間だけですが、大学の留学生用語学コースを受講しました。基本的な発音や、ごく簡単な日常会話を習いましたが、これがのちのちとても役に立ちましたし、留学生の友達もできました。
学生とサイクリングに。
これから日本語教師を目指すみんなへ
これから日本語教師を目指すみなさんにお伝えしたいのは、是非海外に飛び出してみてください、ということです。その国の言葉が話せなくてもその国に住んで働けるなんて、すごいじゃないですか。ほとんどは現地採用ですが、だからこそ、現地の暮らしを現地レベルで感じることができます。企業の駐在員のように優遇された生活ではありませんが、学生や現地の同僚の先生たちと同じ目線で暮らすことができます。世界はあなたを待っていますよ。日本語を通じて世界の懸け橋になってくださいね!