武者修行してみたら?大連で日本語教師

日本語教師になるきっかけ

まず、簡単に自己紹介します。私は生まれも育ちも四国で、就職でいったんは関東に本社を構える商社に入るも、配属先はやはり四国。四国に人並み以上の愛着はあるもののどうにか30歳までには外の世界に飛び出したいと思い、28歳の時、中国は大連に移住しました。移住がまず大きな目標でその為に職を、という単純な流れで、ヒューマンアカデミーに通い日本語教師の資格を取得しました。大連を選んだ理由としては、①知日派が多い②発音がきれい③物価が比較的安い②空気がきれいだからです。私は大連で就職をする前提で、まず半年間留学をしました。大連にある大学の学費や寮費は、北京や上海の有名大学と比べ1/2~2/3程度です。この他に渡航費、海外旅行保険料、一般的な食費、携帯料金等を含んでも年間120〜150万円程度で留学ができます。話は戻りますが、私は留学期間に知り合った日本語教師の方に就職先をいくつか紹介していただきました。そしてすぐ面接に行き、留学後にそのまま就職することになりました。面接で受けた質問は①4年制大学卒(学士以上)かどうか②資格と経験の有無、ぐらいで他は雑談という緩いものでした。当時、大連で働く日本語教師は50~60歳の男性が多かったので、私のような若手人材は珍しかったようです。

学校紹介や仕事内容 

私の就職先は、大連海洋大学という市立大学です。前身は1952年に設置された東北水産技術学校、2010年に現在の名称に改称されました。海洋学と水産学を特色とする大学ですが、日本語学科も有り、1学年に約100名が在籍しています。外国人教師である私の担当科目は、日本語会話、日本語作文、日本歴史、日本地理、日本文化です。その他、学校内外で行われるスピーチコンテストの指導、学校のイベント(実践授業)の指導、補習、日本語コーナー等、多岐にわたります。中でも注力していたのが、日本語コーナーです。週に1度、日本に興味のある学生が集まって、日本語で交流します。皆、昼食も食べず、でも、日本語に触れたい、日本文化を知りたいという一心でやってくるのです。私としてもその子達の期待を裏切る訳にはいきません。毎回全力です。時にはディスカッションを、時にはおにぎりを皆で作ったり。ある時は、大連市内の日本人留学生を招待して一緒にゲームや折り紙を作ったりしました。日本人教師に求められる事とは、教科書通りに日本語を教える事ではなく、目の前にいる学生の学ぶ欲を満たす事と掻き立てる事なのだと感じる日々です。

苦労したこと

教科書一つ渡された後は先生任せだったことです。まず、学期が始まる前に「これが教科書です。形式上シラバスが必要なので〇〇までに提出して」と言われ後は先生任せ。他の先生の授業を見学させてもらえることもなく、逆に私の授業に他の先生が見学しに来ることもなく、驚くほどいい加減で、放任主義でした。「この教え方で果たして正しいのだろうか?」と不安はありましたが、一緒に働いていた日本人教師の同僚や「大連日本語教師会」「笈川幸司先生主催の特訓班」で知り合った諸先輩方にアイディアやヒントを頂きながら授業をデザインしていく過程のおかげで、日本語教師として一回り成長できたかと思います。

現地の言語は必要?

必要です。

少なくとも大連市内の大学に関しては、日本人常勤講師はほとんど直接法で授業を行っていますし、契約時や会議も日本語でフォローしてくださるので、中国語ゼロでも何とかなります。しかし一歩大学の外に出ると全てが中国語必須です。私は今まで幾度も、意思疎通ができず落ち込みました。例えば、旅行先で100元札を偽札にすり替えられた後、言いくるめられて泣き寝入りしたとか・・。携帯電話の料金が高いと分かっていても中々スタッフの説明が理解できず、そのまま払い続けることになったとか・・。スーパーで豚肉を買う時、希望通りの薄さに切り分けてくれなかったとか・・。やはり海外で住む以上、語学は必須です。基礎レベルだけでもいいので、勉強しておきましょう。

生活編

光熱費、寮費込みで1か月の給料は7,000元です。向こうの所得水準と合わせた給料なので単身者であれば問題なく生活できるレベルだと思います。ですが、現地の日本人駐在員や日本にいる元同僚に会うと、自分がしがない暮らしをしていると感じることもあります。「日本語教師として働くなら、給与は二の次、ボランティア感覚で働くものだと思え」と言われましたが、将にその通りです。普段、仕事以外の時間は、学生たちとどこかへ遊びに行ったり、留学時代に知り合った友人と飲み歩いたりしていました。一番多かったのは、一人でカフェ巡りです。贅沢な事はしませんが、とても充実した日々を送っています。

☆これから日本語教師を目指すみんなへ

34歳の女友達がこんなことを言っていました。「海外に移住したい。日本語教師の資格が有ればどこに行っても何とかなるかな?」。それに対して私は「中国であれば、何とかなる。武者修行してみたら?」と答えておきました。数年働いた後、日本でキャリアを積めるかどうかはその人の力量次第ですが、現地の文化や価値観に揉まれることはきっとあなたの経験値を高める事になります。それは決して無駄な事にはならないはずです。臆せず、わくわくする方向にまっすぐ進んでみましょう。

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