ロシア(モスクワ)との相性
私はもともとロシア語を勉強していたわけではなかったので、モスクワに移住することになった時には、ロシア語のキリル文字(ロシア語のアルファベット)だけをなんとなく覚えただけの無防備な状態でした。すぐにロシア語のとんでもない難しさに苦しむことになりましたが、難しすぎて逆に面白い体験でした。
私の場合はすぐにモスクワが大好きになったのですが、最後まで好きになれずに帰っていく人もいます。何となく気が合う、合わないという感じで、ロシアとの相性があるような気がしています。
日本語教師を始めたきっかけ
ロシア語が話せない自分にできる仕事は?と考えると、日本語教師しか思いつきませんでした。幸いにもロシアには親日家が多く、想像以上に日本語を学ぶ人が多いので、仕事を探すのはそれほど難しくありませんでした。モスクワでは日本人教師が不足していたので、すぐに仕事を始めることができました。
学校での仕事
私が勤めていた学校では、週末以外は夜のクラスが中心でした。ほとんどの学生が仕事や学業との両立をしている状態なので、仕事や大学が終わってから日本語を勉強しています。郊外から車で片道2時間半かけて通ってくる学生もいて、そのやる気に頭が下がりました。
ひとクラスは4~6名の少人数。学校独自のカリキュラムがあり、それに沿って授業を進めていきました。私は当時、初級から中級まで全部で6クラス程度受け持っていました。事前に教案を作ってスムーズに進められるように準備をし、教科書やビデオ、絵のプリントを使いながら授業をしました。その準備があいまいだと、納得の行く授業ができなくて反省することも多かったですね。そうやってチャレンジと反省を繰り返しながら、徐々に慣れていきました。授業の悩みは先輩や同僚に相談し、アドバイスをもらうようにしていました。
ロシア語は必要?
【キリル文字】
日本語教師を始めた当時はロシア語がほとんど話せませんでしたが、それをメリットと考え「日本語で」授業をしました。でも、時々単語の意味がどうしても伝わらない時にだけロシア語を使うこともありました。片言でロシア語を発音すると生徒達が和むので、みんなの気分転換にテクニックとして使うこともありましたね。
ものは考えようです。ロシア語が話せる教師の場合、生徒は安心してロシア語で質問をしてしまうし、現地の言葉は片言くらいの方が生徒の集中力や緊張感が保てると、ポジティブに考えて教えていました。
苦労したこと、気をつけたこと
グループレッスンで一番苦労したのは、レベルが違う生徒を一緒に教えることです。よく理解している生徒には退屈になってしまったり、逆に理解が遅めの生徒には難しすぎたり。ですから、質問の難易度によってどの生徒に答えてもらうか、誰と誰を組ませて練習させるかなど、色々な工夫をしていました。
他によくある問題は、授業中に生徒同士で間違ったことを教え合うこと。それが、結構な頻度で間違っているので、授業中は教えながらもしっかり聞き耳を立てていました。「わからないことは、私に聞いてくださいね」と何度も言いますが、シャイな生徒などはどうしても隣同士で教え合ってしまいます。ですから、見つけた時は必ず訂正するようにしていました。
休日の過ごし方
【修道院近くの湖 ここで読書をするのが最高!】
モスクワはとても美しい街で、ただただ散歩するだけでもとても楽しいんです。大きい公園がいくつもありますし、美しい教会や修道院、スターリン建築を眺めながらゆっくりするのが好きです。その中でも私が気に入っているのは地下鉄の駅。モスクワの地下鉄の駅の美しさはとても有名。ツアーがあるほど歴史と人気があるんですよ。
【とにかく美しい 地下鉄マヤコフスカヤ駅】
他に私が一番大切にしているのは、クラシックコンサートや演劇を見に行く時間。日本では考えられないほどの低価格で、質の高い音楽や演劇を楽しむことができるんです。まさに至福のひととき。
【モスクワ音楽院 大ホール】
モスクワでおすすめのグルメ
在露日本人に共通して人気があるのは、ロシア料理ではなくグルジア料理。初めて食べた時、すぐに大好きになりました。街にはグルジア料理レストランが数多くあり、ロシア人にもとても人気があるんです。気軽に食べられるファーストフードタイプのカフェもあるので、無性に食べたくなった時にはよく利用しています。
ちなみに私のおすすめメニューは、ハチャプリ(チーズ入りパン)、ヒンカリ(グルジアの小籠包)、ハルチョー(グルジアのスペシャルスープ)です。
【ヒンカリ 肉汁と少しスパイシーなスープがたっぷり】
【ハチャプリ 真ん中の卵とバターを混ぜていただきます】
そして、時々恋しくなるアジアンフード。そんな時は、ベトナムカフェでフォーを食べることにしています。こちらもお手軽で美味しいですよ。
【定期的に食べたくなる牛肉のフォー】
私の住まい
【部屋からの眺め】
私は中心地から地下鉄で25分、駅から徒歩13分のアパートに住んでいました。学校までは50分ほどかかりましたが、比較的新しくてとてもきれいだし、21階で眺めが気持ちいいし、何より初めて見に行った時に感覚的に気に入ったので即決しました。モスクワではほとんどが家具付きなので、自分で準備するものは寝具やちょっとした食器類。すぐに生活が始められるので便利です。
ラッキーなことに大家さんが親切だったので、初めはついていなかったレンジや湯沸かしポット、換気扇も交渉したらつけてくれました。ロシアではとりあえず交渉してみることが大事です!
これから日本語教師を目指す方へ
【生徒を家に招いてちらし寿司パーティー】
日本語教師は簡単な仕事ではありません。慣れるまではとても緊張しますし、良い授業をするためには授業時間以上の準備が必要なこともあります。でも、だからこそ!の楽しさが後々待っています。
「教える」なんておこがましいくらい、生徒に教えられることがたくさんあります。そして、生徒が上達していく姿を見るのは、本当に嬉しいものです。ひらがなの「あ」から教えた生徒と日本語で会話ができるようになるのは感動ものですよ。
私は学校を退職し個人で日本語教師を続けていますが、現在はオンラインレッスンが標準化しているので、世界各国の生徒に日本語を教えることができる、とても可能性のある仕事だと思います。興味がある方は、是非チャレンジしてみてください。一緒に楽しみながら日本語を学んでいきましょう!