日本語の先生として働くことになったきっかけ
2021年現在、私がドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州に住み始めて2年弱が経ちました。ドイツに移り住む前は、日本の北部に住んでおり、留学も特にしなかった私にとってはドイツが初めての海外移住国でした。幼少期から英語を喋る機会が多々あり、シェアハウスでの異文化交流や海外一人旅を重ねていくうちに、日本の労働・生活スタイルに疲れを感じ、ドイツ移住を決断しました。
私は普段はオフィス勤めの会社員ですが(現在は在宅勤務です)、平日の夕方や土日に日本語教師の仕事をしています。 自分自身、現在4か国語以上(ポーランド語・イタリア語・英語・ドイツ語など)を習得中で、独学+オンラインの先生とのクラス(会話メイン)にて練習を重ねていくうちに、上記4か国語は中級以上のレベルに達し現地の人とも話せるようになりました。また、日本に住んでいた時から、日本への旅行者へ日本語を教えたり、シェアハウスの同居人と日本語のイベントを開催したりしていました。このような自分の経験から、ドイツ移住後、自分も日本語学習者の言語習得をさらに助けたいと思うようになりドイツ人とタンデム(言語交換・ランゲージエクスチェンジ)を始めましたが、移住後1年以上が経ち、コロナのワードがうすらうすらと出始めて在宅勤務になり時間に余裕が出たため、日本語教師として働くことを決意しました。
探した方法
私がオンライン日本語教師として働くことを決断したのは、昨今の世界情勢も大きく関係しています。多くの人が長い期間家にいなければならない状況になるだろうと予想し、その予想は的中しました。
オンラインプラットフォームには色々あり私も試しましたが、長い期間自分自身がオンラインプラットフォーム「italki」を使用して言語を学んでいてその使い方等に慣れていましたので、日本語教師としてもitalkiに応募しました。
(https://www.italki.com/)
ドイツ国内のebay Kleinanzeigen(ものやサービスを個人間で売買できる掲示板サービスです)やSuper Proofもはじめは視野に入れていたのですが、コロナの影響もあり対面でのレッスンが難しいため、上記2つは一旦自分の中では保留としました。(後でも書きますが、自分のスケジュール管理や精神状態が一時期辛くなったので、この決断は自分ではよかったと思っています)
(https://www.ebay-kleinanzeigen.de/)
(https://www.superprof.de/)
仕事内容
オンラインクラスの特徴でもあるかと思うのですが、生徒さんの国籍は様々です。(イタリア、アメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、スイス、ルーマニア、オランダ、ポーランド、ブラジル、ベトナム、カザフスタン、カナダ、スペイン、ハンガリー、中国、ジャマイカ…等)
生徒さんの学習目的はそれぞれ違いますので、一番最初のレッスンで生徒さんにヒアリングをします。例えば、日本語を学ぼうと思ったきっかけについてや、趣味(生徒さんの好きなこと・ものを知ることで、その生徒さんが楽しいと感じてくれるようなクラス作りがしやすくなります)、日本語学習の目標は何か、などです。ヒアリングにかける時間は大体10分くらいで、その後に実際のレッスンをします。(事前に、どんな目的・状況でも使用できるような教材をいくつか用意しておきます)生徒一人一人のためにクラスをデザインしますので、テキストを使う場合もあれば全く使わないクラスもあります。
テキストに関してですが、私の場合は数種類用意しています。「まるごと」、「Japanese for Busy People」、「Nihongo Fun&Easy」、「いろどり」、「みんなの日本語(各言語版)」などを手元に持っていますが、生徒さんの目的によってテキストは使い分けています。また、私が開発中のオリジナルテキストも使用することがあります。
例えば、旅行で使える日本語を習得したい、という生徒さんには「Nihongo Fun&Easy」を主に使用し、Power Pointなどのスライドや写真・イラストも織り交ぜながら、レッスンを進めます。文法の細かい用法などは教えません。「伝わる日本語」を話せるようになること・相手の話すことが理解できること、に重点を置きます。
バランス良く学びたいという生徒さんには、「まるごと」や「いろどり」、「Japanese for Busy People」、そして私のオリジナル教材を主に使用しています。
また、会話力をあげたいという生徒さんには、テキストは使わず、スライドのみ使用、あるいはネットの記事を使用したり、私が記事を書いたり、ニュースを読んだり、フリートークをします。
「みんなの日本語」は、自分用として手元にあります。私の場合、イタリア出身の生徒さんと英語圏の生徒さんが多いので、文法についての質問があった際に各言語で説明ができるようにするためです。
どのタイプのレッスンにも共通していることなのですが、生徒さんの目的が「JLPTに合格する」の場合は別ですが(JLPT対策をしたい生徒さんには文法の細かいところもチェックし、そのための問題集も使用しています)、私のクラスではクリティカルな問題ではない限り文法にフォーカス「しすぎない」ようにしています。
主なレッスンの流れは、様々です。 例えば、バランスよく学びたいという生徒さんの場合、まずは前回の復習から始めます。必要な生徒さんには毎回宿題を出していますので、レッスンの始めに復習も兼ねて宿題の確認を一緒にします。その後は「今日のテーマ」に入っていきます。テーマとは、例えば、「趣味について話す」「道案内や方角」「季節」等、会話のトピックです。そのテーマのキーとなる単語学習から始め、その後は、ダイアログのロールプレイや短いストーリーを読んだりして実際の例文を確認します。そして、このテーマに絡めた質問をして、生徒さんが自分のことや身の回りのことについて話す練習をします。また、いつも同じ流れだとつまらないので、時折ゲームを混ぜたりと様々なアクティビティを組み合わせるように心がけています。
仕事のお供MacBookです
使用言語
生徒さんのレベルや生徒さんが普段話している言語によって違います。
初心者さんの場合には、主に英語を使っています。イタリア語・ドイツ語・ポーランド語話者の生徒さんの場合には、時折それらの言語も織り交ぜています。
初中級〜中級の生徒さんの場合には、日本語メイン+英語で補足のようにしていますが、たまに「日本語だけでお願いします!」という生徒さんもいますので、その場合には日本語のみを使用するようにしています。
上級の生徒さんには、日本語のみを使用します。
よかったこと
生徒さんから「ありがとう」や心温まるフィードバックをもらえた時は、本当に嬉しいです。また、初めは自分に言語の教師の仕事はできるだろうかと不安でしたが、今では私の人生の一部だと自信を持って言えることができます。自分の言語習得の経験が生きてよかったと思うと同時に、自分の語学学習のモチベーション向上にもつながっています。
また、様々な国・言語・文化・考えの人に出会うことができて、日本語教師の仕事は本当に面白い仕事です。自分の視野も広がりました。
苦労したこと
スケジューリング管理に苦労しました。始めのうちは、自分の空いている時間の9割に対して生徒の予約を全て受け付けていました。しかし、2020年の3月頃からロックダウンのピークとなり、毎日一日中働いているような状態になり、精神的にきつくなりバーンアウトしたようになってしまいました。 今は、自分の時間やパートナーとの時間をもてるようスケジュール管理しているので、健康な状態で仕事ができています。
そして、スケジューリング管理にも関連するのですが、始めのうちは授業の準備にかなり時間がかかり、時間にも精神にも余裕があまりなかったです。実際の授業の時間よりも数倍の時間をかけて準備する、ということは多々ありました。現在は、経験を積んだことで心にも余裕ができ、今まで作成した教材のストックもあるので、時間の節約は以前よりもできていますが、それでもまだ準備に時間がかかってしまうことがあります。
休日の過ごし方
ベルリンにて
パンデミックの前は、最低でも月に1回はドイツ国内を旅行したり近隣国をよく旅行していました。特にドイツ国内ですと、FlixBus・Train・BlablaBusなどの格安交通機関がおすすめです。また、よくMeetupの交流イベントで知り合った友達とカフェでコーヒーを飲みながらお喋りをしたり、イベント(お祭りやライブハウス)に行ったりして休日を過ごしていました。
ドルトムントのお祭りにて
今は時間があれば公園で散歩をすることが多いです。ドイツの公園には様々な種類の鳥や動物がいるのも面白いと思います。
ビーバーに似ていますが、ヌートリアという動物です。おうちを作るための枝を探しています!
生活編
私の住んでいるアパートは、30平方メートル2部屋で460ユーロで、インターネット・電気代は別払いです。私は割と市の中心部近くに住んでいるので、部屋は狭いものの家賃はお高めです。でも、隣の市に住むと、同じ広さ・質でも家賃はグッと下がります。(例えば、50平方メートルで350ユーロなんていうアパートもたくさんあります!)
普段の食べ物ですが、私の場合は、ドイツ料理よりもイタリア料理や日本料理などその他の地域の料理をよく食べています。ドイツに来たばかりの頃は、いわゆるポテト料理やソーセージ、肉料理などもよく食べていましたが、飽きてしまいました。(笑)
私の住んでいる地域には、日本食スーパーやアジア食品スーパーがいくつかあるので、月に一回程度日本食品を買っています。また、普通のスーパーでも基本的な日本食(日本のお米、みそ、海苔、豆腐、みりんなど)は買うことができるので、あまり日本の料理が食べれなくて寂しいと感じたことはありません。
現地のグルメ
今は店内で食べるのは難しいですが、日本食レストランがいくつかあり、日本と同じ質の料理を食べることができます。
日本のお寿司そのものです!
ドイツ料理レストランは意外と少ないかもしれません。レストランとまではいきませんが、ポテト(いわゆるフライドポテト)のお店はたくさんあります。
ドイツ料理レストランにて。肉が多いです
日本語教師を目指すみんなへ
いきなり日本語教師になるのは少し…という方は、まずは言語交換から始めてみるのも一つの手だと思います。学習する側と教える側の両方を経験できるからです。
学校や企業・機関で教える場合には資格が必須でなかなか敷居が高く大変ですが、オンラインの場合ですと資格がなくても教えることができます。(とは言え、自分での勉強は必須です!)
教えることには責任が伴いますが、その先には生徒の成長との対面が待っています!決して簡単な仕事ではありませんが、やりがいのある仕事ですので、興味のある方は是非とも一歩を踏み出して挑戦して欲しいと思います。